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天候の不安


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 毎年のことだが、いまの季節になると本格的な作付けが始まるとともに、作業は順調だろうか、種の発芽状況はどうだろうか、遅霜はないだろうか、と天候が順調であるよう祈るような気持ちになります。また、秋に播いたごぼうもこれからが本格的な生育時期を迎えるので、これもこの一ヶ月が重要な時期です。

 昨年はこの時期が低温であらゆる作物が遅れたものの、5月後半、6月の高温で取り戻しました。しかしその後7月・8月の多雨と夜間の気温が下がらず、じゃが芋・たまねぎ・人参・ビートなど、多くの作物が大打撃を受けました。おととしに続く凶作に大打撃を受けたのです。ですから、私たちにとっては2011年の新モノの作柄に大きな期待をかけているのです。ごぼうも同様その後の豪雨などの影響を受けて不作。6月末、7月、8月の収穫が順調であることを願っているのです。

 野菜は自然が生み出すものです。順調な栽培を目指して技術の改良やあらゆる手を尽くしての工夫で天候不順に負けないよう全力を尽くすのですが、どうしても自然の力に勝てないことがある。そんな時に、個別の農家さん、あるいは更に個別の畑一枚一枚を観察しますと、なぜかうまくいっている農家さんや畑があるのです。どこが違うのだろう。事情を聞くと必ず何かある。去年のじゃがいもでは「暗渠(あんきょ)」のことはたいしたものだと感心させられました。畑の下に見えない排水溝を整備する。すごく手間とお金がかかることなのですが、日頃からこのような基盤整備を心がけた農家さんは結果がはっきり違うのです。どの農家さんもじゃがいもに空洞が入ってしまった去年の作柄ですが、こういう「アヒルの水かき」的な地道の努力をしてこられた方々はちゃんと結果になって還っている。

 「暗渠」のことは一つの事例ですが、農業は自然と格闘する人間の努力次第でかなり乗り越えられる要素もあり、これがとてもやりがいがあり、努力し甲斐のある奥の深い仕事だと感じています。経験と工夫で乗り越えられる可能性がかなりあるのです。しかしながら、プロの農業者でも18歳から始めて65歳までの間に一年一回、合計47回しか経験が出来ない仕事です。翻って、人類農業発祥から考えてもせいぜい8千年間、8千回程度。工場ですと毎日同じ仕事で製品をつくり続ければ年間300回以上、昨日の反省を正確に繰り返せば人類の農業の歴史を30年ほどで体験できるのです。工業の大発展とは、可能性の前提から農業にはハンディがある。私は個人的には、農業こそもっと研究体制が整備されなければならないと思います。観察と研究の努力こそ求められています。人類がいつまでも天に祈ることを続けなくて済むように。