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適地適作


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 最近、日本でも中国の大干ばつが報道されるようになってきました。少なくとも、私たちがごぼう栽培などのため通っている江蘇省・安徽省は、かなり激しい干ばつでした。(6月13日~16日巡回)しかし、さすが治水の歴史が長いこの地域だけに灌漑も整備されており、人工的な潅水のおかげで壊滅した畑は全くありませんでした。

 更に感心したのは畑作地帯の食糧の基礎となる小麦だけは既に収穫を終え、比較的順調な作柄であったことでした。1メートル以上の地下にまで垂直に根をはり、干ばつでもタフに実を実らせる小麦。中国では4000年以上も基幹食料として人口増加を支えてきた小麦は、こういう難しい年でも安定している穀物なのです。それにしても「干ばつに不作なし」とはよく言ったものだなあと思いました。

 しかし、水不足でこそ大豊作という野菜があるのには驚きます。それは玉ねぎです。大干ばつのなかで、玉ねぎは逆に大豊作。10アールあたり7トンをこえる超効率収量で、6月半ばをすぎて産地の価格も大暴落。他の野菜の価格高騰をものともせず、優等生ぶりを発揮しています。

 昨年、私たちは北海道の多くの玉ねぎ畑において多雨による病害の発生などで期待した収穫量が得られませんでした。それにも増して、品質があまり良くなく困り果てたのはつい先日の記憶です。中国の大干ばつの真っ只中で北海道の結果と比較するに、適地適作とは何かについて考えさせられました。

 中央アジア周辺が原産地と言われる玉ねぎ。日本には江戸時代に伝わり、明治時代に札幌で本格的な試験栽培が始まり、その後、その滋養の豊かさで日本中に栽培が普及しました。玉ねぎ栽培は多雨の日本の気候条件と、結球に日長条件や気温が複雑に関与する生長特性から日本特有の品種改良が行われてきましたが、近年、ときには農薬などの手立てを講じなければならない気象条件に遭遇する場面があるようです。国内産野菜が全てという考えの方もあるかもしれませんが「無理をする必要があるのかな。」と感じている野菜の一つです。

 今回の中国滞在中に、この地域の玉ねぎ栽培は時として簡単な土壌消毒などを施すこともあるようですが、ほとんど農薬散布などは必要ないという現実を見せつけられました。適地適作とは何かについてもう一度考えさせられた次第です。
 個人的信念ですが「地球を畑にする」という発想転換が必要になっているのではないでしょうか。